紅蓮の鬼
『では、我らに力を貸せ』
藺草さんが部屋から出てきた後に、年長の人間が言った。
どうやら彼は着替えていたようだ。
寝間着から紺色の着流しに変わっていた。
『謹んでお断りします』
藺草さんの口調は穏やかで、彼は呆れているようだった。
『無礼者!』
藺草さんは至って真剣なんだが、彼のふざけているともとれる態度が気に入らなかったのだろうか。
若い人間が叫ぶ。
『………………………』
〝無礼者〟と言われた藺草さんが眉をひそめた。
『この御方が誰かと知っての無礼か!!!』
そう言って、若い人間は腰にぶら下げている刀に手をかけ、抜刀しようとする。
それを年長の人間が制止した。
若い人間は渋々刀から手を離し、舌打ちをした後、藺草さんを睨む。
その様子を彼は白い目で見ていた。