紅蓮の鬼


『無礼者はどちらです?』


静かな口調だが、明らかに怒髪衝天だ。


『家をこんな状態にしておきながら、力を貸せ、とは随分じゃないですか』


『……そうか…』


年長が目を落とす。


自らの非を詫びるのかと思えば、人間は腰に下げている刀に手をかけ、抜刀した。


『!!?』


私は驚かずにはいられなかった。


けれども藺草さんは、こうなることを予想していたようで、ただ、静かに人間たちに冷ややかな視線を向けていた。


若い人間ともう一人の人間も同じように、年長に続いて抜刀する。


そして年長は切っ先を藺草さんの目と目の間に向け、


『ならばここで死ねッ』


と、言い放ったのだ。




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