紅蓮の鬼
――無理だ
いくら黒鬼の藺草さんでも、数が多すぎる。
外にいる人間の数がかなり増えている。
もしかしたら、死んでしまうかもしれない。
私は藺草さんの服を握る手に力を入れる。
『大丈夫』
ふ、と彼は笑う。
『欲があれば生きれるから』
〝生きたいっていう欲〟
そう言って、私の頭を撫でる。
『大丈夫』
――そんなことを言われたら
もう『はい』としか言えないじゃないですか。
私は彼の服を握る手の力を弱めた。
スッ―と、温もりが消えていく。
そして藺草さんは、火だるまが出ていった方へと足を進めた。