紅蓮の鬼


それとほぼ同時に、また、銃声が聞こえた。


今度は誰かの血も流れた。


だけど、淋のじゃない。


……血、飲んだから分かる。


「ぐァっ」


空木に飛びついた女がうめき声を上げた。


彼の方から殴ったり蹴ったりする音が聞こえる。


――うわぁ、容赦ねぇ…


「全く、君は彼女とは似ても似つかないね」


呆れたような空木の声音だった。


ドサッと何かが投げ捨てられたような音がして、それを見ると、思った通り空木にボコボコにされた女だった。


顔面はマジで誰か分からないくらいになってて、血まみれの痣だらけだった。


手足も。


「………容赦ねぇな…ほんと…」


「そう?これでも一応手加減したつもりなんだけど」


そう言う空木の顔はさっきとはうって変わって、ものすっごいスッキリしたような表情をしていた。


――うわーストレス発散しちゃったよこの人ー


なんて思ったけど言わないでおこう。




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