紅蓮の鬼
それからどれくらい経っただろうか。
飛屋久の里まであともう少しというところで、楓太が連れてきた、太った男が行く手を阻む。
彼はどうやらワタシ達を待っているようだった。
「申し訳ありません。私が未熟ない故に最悪の状態となってしまいました」
切歯扼腕しているかのような声音だった。
片膝立ちをして、目を落としている。
最悪の状態というのは、人間が再び飛屋久の里に来たのだろう。
それはつまり、人間と鬼の戦争を意味している。
ワタシは眉根を寄せ、「状況は?」と聞き、三人の男たちに「小鬼を呼べ」と指示する。
「状況は――」
「姐さんッ!」
切羽詰まったような、声が響く。
男の言葉を遮ったのは、空木だった。
こんなに焦った表情をして、息を切らしている彼を見るのは久々だった。