紅蓮の鬼
「…ユキ、兄様……」
そう。
ワタシはユキ兄様に包まれていたのだ。
刺さるはずの物はワタシに刺さらず、寧ろかすった程度。
ほとんどと言っていいほど彼に刺さっていた。
「何故?」
頭の中は疑問符だらけだ。
—―何故ユキ兄様がワタシを庇う?
彼はワタシの問いなどに答えず、ズボズボとゆっくり自分に刺さったものを抜いていく。
「……なんて顔してんだ、お前」
ふと、ユキ兄様がこちらを見て、「馬鹿じゃねぇの」というように言った。
「…何故…ワタシの盾になるような真似を…」
—―疑問符しか頭にない
それを聞いたユキ兄様はキョトンとした。
「あのなぁ…」
そして、呆れ顔で話をする。
「俺はオマエという頭の手足だ」
「…………………」
この話はだいぶ昔に誰かが言っていた。
「頭が死んだら、手足は動こうにも動けねぇのは知ってんだろ」
「…それに」と、彼は続ける。
「俺が死んでも、俺の代えになる奴はいくらでもいるんだ」
切なく、仕方がなさそうに笑った。