紅蓮の鬼


—―違う


ワタシが言いたいのは。


「死ぬって…どういうことだ……」


きっとワタシの顔は不安一杯だ。


「…そのままの意味だよ」


ユキ兄様は柔らかく笑う。


—―何故、笑う


「見てみ?」


そう言って、彼は手を天に翳す。


「…な……」


それを見たワタシは絶句した。


—―…馬鹿な


そんな莫迦な。


嫌だ。


信じたくない。


それでも、彼の手はサラサラと指先から灰になっていく。


「あぁ…そろそろお別れかな」


ユキ兄様はフ、と口角を上げる。


—―そんな…


何故、笑う。




何故、哂っていられるのだ。






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