紅蓮の鬼


そんなことを話した次の日。


何故か年寄りがやって来た。


年寄りっていっても、体格が大きくて威厳がありそうな顔つきをした、怒らせたら面倒くさそうな60代後半の男。


そして淋を見つけるなり彼女の顎を掴み、クンっと上げる。


「ワシの嫁になれ、竜胆」


――ワオ、直球!


そして、こんな白昼に堂々と口説く人初めて見た!


それを見た空木は焦った表情を浮かべ、彼に言った。


「お放しください、霧幻様。我らが長には、まだここにてやることが残っております」


空木がそう言っても彼は聞く耳持たずだった。


「放せ。貴様と行くつもりなどない」


淋が思い切り眉を顰める。


まるで「あんたのことすっごい嫌いなんだからその手放しなさいよ」とでも言っているようだった。


「黙れ。お前には拒否権などない」


霧幻と呼ばれた男は、ギロリと淋を睨む。


――何この会話ー


命令と否定しかしてないー。




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