紅蓮の鬼
こうして、俺は淋にコクる前にフラれた気分になった。
「姉さん!イヴァル!」
そして彼らを呼び。
「帰るぞ!」
と叫び、ズカズカと歩く。
――あぁぁあチクショー
藺草藺草って旦那の名前かよっ。
「あ…えと、帰るの?向こうに」
空木が俺に言う。
「帰る!そろそろ帰んねーといけねぇし!」
「あ、じゃぁ、バイバイ」
空木はいつものように笑い、俺に手を振る。
「えらく急ね」
ポーン姉さんが俺に駆け寄って言う。
「じゃーなっ」
振り返って、そこにいる四人を見る。
霧幻さんはポカンとしていた。
淋が俺の方に駆け寄ってくるのが見えたので、俺は二人を先に行けと促す。
「楓太、」
「なに」
「百歩譲っても今のお前の妻にはならんぞ」
「!!?」
彼女はそれだけ言って余裕そうに口角を上げ、また空木の方へと戻って行った。
――あ…あのヤロゥ……
俺は右手の甲で口元を隠し、二人のもとへ行く。
「あれ、耳真っ赤だけど」
イヴァルが「どしたの?」と心配そうな顔をする。
「お子様には関係のないことよ~」
ポーン姉さんがニヤニヤしながら俺を見る。
――畜生、なんで淋にバレたんだ
言ってない筈なのに。
「なになにー?何でそんなに顔赤いの?」
「うるさいわねー。今度こそ本当にごま油で焼くわよ」
「うっさいな!!!遊んでないで帰るぞ!!!」
「ちっ…城に着くまで命が伸びたわね」
「本当に焼くの!!?」
ポーン姉さんとイヴァルのお約束のコントが始まる。
「…チクショウ……」
――だったら何十年と何百年と待っとけよ
絶対お前より強くなってやる。
俺はそう思いながら、帰路についた。
≪おしまい≫