密恋~貴方に触れたくて~
綺羅は、伊集院先輩を追い掛けて同じ大学を受験したって言っていた

しかも、一緒に暮らしているんだって‥‥

私は恋愛経験なんて、思い返しても一度だってない

だけど綺羅と伊集院先輩は、本当に仲が良くて見ていて幸せになってしまう

私も恋をしてみたいなぁ~って思ってしまうくらいだ

だからって、恋なんて簡単に出来る訳がない


「悠璃の理想って、どんなタイプの男性なの?
 肉食系?
 草食系?
 アイドル系?
 もしかしてロック系とか?」


いやいや

そんな事を言われても、なんて答えていいのか分からない


「良く分からないよ
 でも、例えば横断歩道で信号の変わり目とかの時、そこにお年寄りが居たとするでしょ?
 そんな時に、さり気なく手を差し伸べられる男性が居たら好きになるかも‥‥」

「はっ?
 何それ‥‥
 まぁ~、それは分からなくもないけどさぁ~
 そんな男なんて実際は居る訳ないじゃん!!
 皆、他人なんて構ってやれないご時勢なんだからさ
 それより現実を見なきゃ恋なんて出来ないんだよ~」


分かってるよ

今まで、そんな現場なんて見た事すらない

自分だって、お年寄りに手を差し伸べられる事がないし、差し伸べようと思っても断られるんじゃないか、年寄り扱いするなって言われるんじゃないかと、そう思うと怖くて身体が動かない

だけど、もしそんな男性が居たら、きっと恋をしてしまうかもしれない


「悠璃はさぁ~
 まだまだお子ちゃまだね~」

「そこが、悠璃ちゃんらしいんじゃね?」


綺羅と伊集院先輩に笑われながら、大学の桜並木を歩いていると、大学の門の前の横断歩道が視界に入った

すると、そこにはチカチカと信号の変わり目を知らせる信号機が点滅していて、交通量の多い交差点の真ん中にはお婆ちゃんの姿が見えた


「「「あっ!!」」」


その瞬間、まさに私が言っていた光景を目の当たりにしたのだ

スラリとした高い身長

薄茶色の髪

此処からは、その程度しか見えなかったが、クラクションが鳴り響く中、そんな事を気にせずにお婆ちゃんの背中を支えるように、ゆっくりと歩く男性が居た

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