密恋~貴方に触れたくて~
奪われる視線

まるでスローモーションのように、ゆっくりと流れる光景に、私達は釘付けになってしまっていた

ペコペコと何度も男性にお辞儀をするお婆ちゃん

彼の顔までは見えないけれど、私の心臓はドキドキと高鳴っていた

この心臓の高鳴りはなんなの?

苦しくて、彼から視線を逸らす事なんて出来ない

そんな彼が、お婆ちゃんと別れて大学の方にやって来る

こっちに来るって事は、同じ大学の生徒なの?

どうしよう‥‥

どんどんと、こっちに向かって歩いてくる彼に心臓の高鳴りはMAX

どうして良いか分からず、彼を見たいような‥‥

それでいて見たくないような‥‥

恥ずかしさと困惑した気持ちが私を俯かせてしまう

胸を張って、ちゃんと前を見なきゃ!!

そう思っても、ドキドキが高鳴るにつれて息苦しくなってしまう


「あれ~
 なんだ!!
 アイツ、桐生じゃん」

「桐生?」

「あぁ~
 建築設計科3年の桐生蓮」


伊集院先輩と綺羅の声が、何だか遠くに聞こえる


「よっ!!
 幹太じゃん♪
 何、そんな美人を両手にして歩いてんだ?」

「いいべ~♪
 ってか、コイツが俺の彼女で上条綺羅で、そのダチの月城悠璃ちゃん
 2人共、俺等と同じ建築設計の1年」

「へぇ~
 俺は桐生蓮
 ヨロシクっ!!
 ってか、1年って事はさ~
 もうサークルとか決めたのか?」


私が見えるのは、彼の足元だけ‥‥

どうしよう

顔が上げられない


「それが、私達まだ決めてないんですよ~!!
 色々あって迷っちゃって‥‥
 でも、悠璃と一緒に同じ所に入ろうと話してるんです♪」

「ふぅ~ん
 だったら‥「駄目だ!!
 サッカー愛好会なんて名前だけじゃん
 飲み会ばかりでよ~
 そんな所に綺羅と悠璃ちゃんを入れられるか!!」


いつになく伊集院先輩の大きな声に、つい私は俯いていた顔を上げてしまった


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