【完】ハチミツ彼女
働く時間に比例して長いバイトの休憩時間中、暇潰しに街を歩いていたときにふとジュエリーショップが目について、絶賛浮かれポンチなうだった俺は思い立ち、立ち寄った。
店内を見て回ってネックレスにしようか迷ったけど、俺のって証で、男避けに一番わかりやすい指輪にした。
前々から蜜に寄り付くクソうざい害虫どもを牽制しようと思ってたところだったから、ちょうどタイミングもよくて。
買ったのは、もうすぐ付き合って一年の記念日がくるけどそれとは別に、蜜が俺を喜ばせてくれるなら、それなら俺も蜜のことを、という理由。
バイト終わり、なにも連絡なくて誕生日終了のお知らせのテロップが流れたときは、まあ指輪まで浮かれて買ったもんだから、何ページか先の前述した通りのお察し。
だけどもしそのまま俺の誕生日がフェードアウトしていってても、それはそれでせっかく買ったし、結果蜜の笑顔が見れればなんでもいいから、結局どう転んでも蜜の指に指輪がはまることに変わりはなかった。
高校生のバイトが買えるような安いものだけど、許して。次はちゃんとした本物をあげるから。
小さく口を開けて、すぴすぴと眠る蜜の手を取る。左手の華奢で細い薬指にするすると通っていく指輪にドキドキと緊張する。
…おお、やばっ。俺天才。
何度も触れてきた指を思い出しながら当てずっぽうで買った指輪は奇跡的にジャストサイズでぴったりとはまり、完璧すぎてめちゃくちゃ決まるドヤ顔。
いや、普通にすごくね?さすが蜜のことならなんでもわかる俺〜。
閉じたカーテンの隙間から漏れる月明かりが指輪をキラキラと輝かせ、それを眺める俺は嬉しくなる。自然と笑みが零れる。俺の、蜜。俺だけの蜜。愛してる。絶対死んでも離さねぇ。