【完】ハチミツ彼女
つーか、さすがだな俺の家族。空気読めすぎじゃね?気にすることがなにもないのはありがたいけど、逆にそこまで気遣われたら恥ずかしいんだけど。
帰ってきたら親父と母さんにニヤついた顔でめちゃくちゃイジられるんだろうな…。特に母さん…。想像するだけでうざい。ダルい無理。当分会いたくない…。そういうわけにはいかねぇけど。
ああああ、感謝だけどものすごい嫌。
はぁ、複雑な心境に重いため息が口から零れる。
手紙の下部に【PS.避妊は絶対するべし!!しない男はゴミだよ。】と絵心が壊滅的にない(幼少期の頃は怖すぎてよく泣かされた)母さんが描いたなんなのか理解不能なただのバケモノが吹き出しでそう言っているのは見なかったことにして(避妊は当然ちゃんとしました)、おりおり、折りたたんだ手紙をポチ袋の中に入れ、スウェットのポケットにしまう。
さて、朝飯作りますか…。
気を取り直してキッチンに移った俺は、棚からフライパンを取り出し、なに作ろうかと思いながら冷蔵庫を開ける。と、すぐに目に入ったいつもはない大きめの白い箱。あ、これって――、
「…うおっ!?」
もしかして…、とその箱の中身に期待を抱いたと同時に、突然後ろからドンッ、と突進の勢いで誰かに抱きつかれた。
誰か、なんて蜜しかいないしありえないけど。母さんの手紙では帰ってきてないはずの兄貴だったらキモいしキモいしキモいし怖い。秒速で腹に肘をめり込ませてる。
「はよっ、蜜。どうした?」
「っとーや、これ…っ」