曖昧

 最終電車が滑り込むと同時に隣のベンチで、

 駅員が一人の女の酔っ払いの相手をしている声が聞こえてきた。

「起きて下さい。これが最終ですよ」

「‥‥‥わかってる」

 起き上がろうとするが足がもつれて起き上がれない。

 意味不明な言葉を喚いていたかと思うとその声は静かになる。

「起きて下さい」

 そのやり取りを聞いていた影山は楽しい気分になった。

「俺の知り合いです」

 気がついた時には声を掛けていた。

 駅員は一瞬訝しげな顔をしたが、よっぽど困っていたんだろう。

「それなら最初っから連れの方お願いしますよ」

 ぼやきが入った。
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