曖昧

 顔をはっと上げると電車の窓に映った自分の顔と目が合った。

 それは、最近見たことのなかった穏やかな表情をした自分の顔。

「どうしたの?」

 寝ぼけた、甘えた声が自分の膝の上から響いた。

 その顔は影山が想像していた顔と違い可愛いものだった。
 
 潤んだ瞳が自分をじっと見つめている。

 心の中に甘い感情が溢れた。

 真っ赤になった自分の顔に影山は気付いた。

 俺は‥‥‥?

 これが影山の一目惚れの瞬間だった。
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