ビッグマンズ2
  彼女がいかに薄っぺらい人間かを思い知るのに、私は何ヶ月とかからなかった。 


 彼女は何年か前に離婚して、飼い猫とパソコンだけを持って、中目黒の実家に戻ったという。


ネットゲームと猫が生きがいということからも分かるように、都合のいい人間関係しか築けない。  普段、つるんでいる相手でも、いざという時には平気で裏切る。

 知識欲や向上心はゼロだが、情欲だけは、盛りのついた猫のように強い。        

 自分には甘いくせに、陰で偉そうにあれこれ他人を評価してみたりする。  彼女の話題のほとんどは根も葉もない噂話だ。                       

 私はいつも、山本さんが近くを通るたび、「見ざる、言わざる、聞かざる」を心がけ、実践している。    それでも、他人の気持ちなんて考えたこともない彼女は、そんなことお構いなしに、耐え難い内容の話を嬉しそうに話し始める。   


彼女に自分の中の一番大事な部分を汚されないよう、今日も私は、戦場のゲリラさながらに必死で隠れる。



 「あ――っ!!  笠置さん、ここにいたんだ――っ!!」    

 「う、うん、まあね!」  

 しまった!また捕まってしまった。。 
 
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