危険な瞳に恋してる
「プール・バーは、プールとバーでも。
 プールで泳ぎながら酒を飲む場所でもねぇ。
 ビリヤード場だよ。
 守屋は、ビリヤードをやった事は、あるか?」

「ビリヤードぐらいは、知ってるわよ!」

 ゲラゲラ笑う、紫音の服を引っ張った。

 9個のボールをテーブルの隅に開いている穴に入れるヤツだ。

 ……って。

 ん、もう。

 わたし、紫音のこういうトコ嫌い!

 普段は、静かなクセに、一度笑い始めると、止まらないんだもんっ!

 しかも、ヒトが困っている時に限って大笑いして!

「紫音!!
 何も、そんなに笑うコトないでしょう?」

 いい加減、わたしも怒って、大声を出すと、やっと紫音は笑い止んだ。

「悪い。
 昔、薫が同じコト言ってたの思いだしてた」

 紫音は、まだ続いている、くすくす笑いをなんとか、飲み込んで、言った。

「薫ちゃんが……?」

 大きな身体をドレスで包んで、ホールの上を滑るように歩く。

 聞き上手で、世慣れた感じの薫ちゃんも、そんな時があったんだ。

 今は、とても信じられないけれど。
 
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