危険な瞳に恋してる
「こんなに、紫音は器用なんだもん。
 今からでも。
 やりたいことあるなら、やればいいのに」

『教師』みたいに冴えないわけでなく。

『ホスト』みたいに、疲れきって眠らなくてもいいお仕事。

 きっと紫音なら。

 今からでも、出来るよ?


 わたし。

 柴田たちに聞こえないように、こっそり。

 思わずそう、紫音に言ったら。

 紫音は、少し困った顔をして笑った。

「もう、この年だし、今更な……
 もっと若い時に。
 進路を決める時に。
 親と話し合っておけば良かったかもな。
 やってもみない内に、勝手に無理だって決めつけて。
 諦めなかったら、何か、変わっていたかもしれない……」

「紫音……」

「そんな顔するなよ、守屋。
 オレは、今の生活だって、そんなにはキライじゃないんだ。
 昼間の顔では、守屋に出会えたし。
 自分の腕一本で戦う夜は、刺激的だ。
 これから、一生遊び暮らしても余るくらい、金もあるし。
 守屋を手に入れた今、これ以上欲しいものは、もう何もない」
 
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