危険な瞳に恋してる
「……でさ。
チケット予約した時。
何人で見に来る予定だったの?」
「オレ一人だ」
劇場で。
パンフレットを買って、ここが席だから、と紫音に言われて、驚いた。
「……一人で観るのに、S席を五つずつ二列で。
十個も予約したの……?」
わたしが、おそるおそる聞くと。
紫音は、なにか、変か? と首をかしげた。
「ああ。
だって、前や、両脇にヒトがいると、舞台に集中できないだろう?」
「そりゃ、そうだけどさ。
もし、雨が降ってこなかったら、コレ無駄になるところだったんだろう?」
超、もったいねー、とあきらクンも騒ぐ。
「だが、何ヶ月も後の予定は、判らないぞ。
席が時々無駄になるのは仕方が無い。
だから。
さすがに毎回はS席を丸々買い占めたりは、しないが」
「S席丸々買占めぇ~?
ん、だよ。
どうせなら、マンガの金持ちみたいに、劇場の席丸々買い占めて貸切にしちまえばいいのに」
あきれて、やけくそのように言うあきらクンに、紫音は、しれっと答えた。
「ああ。
それはもう、何回かやってみた。
だが、舞台の俳優達も、観客がいないと張り合いないようだし。
チケットが欲しくても手に入らなかった、他の客に迷惑をかけるから、やめたんだ」