危険な瞳に恋してる
 わたしが、何のことだか判らずに、おたおたしていると。

 あきらクンは、片目を瞑った。

「ビリヤードって、さ。
 キューっていう棒で、玉を突くんだけど。
 初心者にやり方を教えようとすると、身体が密着してもおかしくない体勢になるんだよ」

「……え?」

「ふふん。
 こういう風に、身体を包み込むように抱いて……」

「きゃあ」

 あきらクンは、柴田を抱き寄せると、自分の傘を、キュー代わりにしてみせた。

「ん~~萌ちゃんのカラダって、やわらかい~~
 ……じゃなくて♪
 こんな風に、女の子抱えて、突……あ、すみません!」

 あきらクンは、前にヒトがいないことをよく見て、傘を前に出したのに。

 わたし達を押しのけるように、突然割り込んで来た男のヒトに、あきらクンの傘の先が、当たってしまった。

 それは、決して強い当たりではなかったはずなのに。

 当たったヒトは、うああっと叫び声をあげると、道に転がった。

「いてぇよぉ~~!
 あいたたたたたっ!」

 その、騒ぎに。

 当たった男の連れらしい。

 派手な服を着たヒトが、あきらクンを、にらみつけた。

 
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