危険な瞳に恋してる
 


 がっ!


 鈍い、音がして。

 あきらクンは、まともに道路にしりもちをついた。

「きゃああああっ!!」

 わたしや、柴田だけじゃない。

 他に道を歩いていたヒトたちが、小さく悲鳴をあげて、ぱあっと散る。

「こ……の!
 ヒトが下手に出ていれば……!」

 殴られて、かえって、怖くなくなったらしい。

 キレたあきらクンは、素早く立ち上がった。

 そして、派手な男を殴りかえそうと、拳を振り上げた。

「萌に、触りやがったら許さない!」

「……待て。
 あんたは、やめておけ」

 あきらクンの拳が振り下ろされる寸前。

 紫音の腕が、あきらクンの腕に絡んで、重そうな拳が止まった。

「何すんだよ!」

「あんたは、一応教師だろうが?
 暴力沙汰は、マズいんじゃないか?
 こっちは、オレが受け持つから、守屋を頼む」

 ささやく声に、あきらクンも、鋭くささやき返した。

「お前だって、立場は同じだろう!?
 しかも絡まれたのは僕で、紫音は関係ない!」

「立場……?
 ……オレはあんたとは、ちがう」

 あきらクンの言葉に、紫音は、ふっと鼻で笑った。
 
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