危険な瞳に恋してる
 あ、アヤネさんって、しょっちゅう、紫音を指名してるお姉さん……?

 驚いている間もあればこそ。

 もしかしたら、その名前を聞き出すために、やくざを挑発したのかもしれないけれど……!



 相手、五人もいるんだよ?

 しかも。

 見るからに、強そうな男のヒトたちが……!

 紫音は、一体、どうするつもりなんだろう!

 逃げて紫音!

 交番まで逃げれば、きっと、お巡りさんが……!




 だけども。





 わたしの心配をよそに、紫音は、一歩も動かなかった。

 逃げないのか。

 足がすくんで、逃げられないのか。

「紫音……!」

 わたしが、思わず、叫んだ時だった。



 紫音は、ぎらり、と悪魔みたいな表情で笑うと。



 何気なく、手を突き出した。

 その瞬間。

 紫音にかかって行ったやくざの一人が、高々と、空中に、舞った。

 
< 181 / 313 >

この作品をシェア

pagetop