危険な瞳に恋してる
 え……!?

 わたしには。

 何がおきたのか、さっぱりわからなかった。

 ただ。

 隣りにいたあきらクンがすげーと唸る。

「僕、ガキの頃。
 無茶してて、ケンカをいっぱい見たり、自分でもしてたけど……
 紫音のレベル、かなり、ちがくね?
 って感じ。
 絶対、どっかでちゃんと武道かなんか習ってる。
 しかも、相当長く」

 言っているうちに、また一人、道端に沈んだ。

「何がすごいって。
 紫音は、相手を殴っているわけじゃない。
 投げ飛ばしている、わけでもない。
 ただ、避けて、相手の攻撃を受け流して自滅を誘っているだけなのに……
 ……すげ、また飛んだ」

 コレで、とうとう怪しいひとびとが半分になった。

 本当に、すごい……!

 あっと……言う間だった。

 戦う気をなくしたヒトたちを睨みつけて、紫音は、鋭く囁く。

「……まだ、ヤりたいか?」

 紫音に睨まれて、やくざの咽が、小さく鳴った。

 覚えてろ! なんて。

 今では、マンガでもなかなか喋らない言葉を吐いて。

 動けなくなった仲間を引きずるように連れて。

 やくざたちはどこかへ消えた。



 
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