危険な瞳に恋してる
「あんたは、なんでウリなんてしようと思ったんだ?」

 自分の家に一番近い駅について、初めて。

 ホストクラブから今まで、ずっと黙っていた、紫音がわたしに聞いてきた。

 この上なく、不機嫌そうに。

 ……不機嫌なのは、当たり前か。

 仕事を早々に切り上げなくてはいけなかった上に、大事なお客さんに花束で殴られれば、誰だって……

 ………。

 それでも、これは『先生』にも。

 ましてや、今日出会ったばかりの『紫音』にも、話す事じゃない。

 黙っていたら『紫音』にぎろりと睨まれた。

 その迫力に、わたしはしぶしぶ口を開く。

「わたしが好きなヒトが……
 色気の無いコは好きじゃない……って……
 色々させてあげられるコの方がいいって……
 はじめて……する、と……
 すごく色っぽくなるって聞いた事があるし……
 いろんな事、覚えられるかな……って」

 言ったとたん。

 紫音のどこかでぷちっと何かがキレたようだった。

「莫迦か!? あんたは!
 もう少し自分を大切にしろ!
 そんな奴とっとと忘れて、もう少しマシな奴を探せ!」
 
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