危険な瞳に恋してる
 だけど。

 加藤先輩は、わたしの腕をぐいっと引っ張って、怒鳴った。

「おかまで用が足りるなら、お前の所なんざ来ねーよ!」

 あれほど、見つかるなって言ったのに大騒ぎにしやがって、と口の中で、呟く。

「速く来い……!
 でないと、紫音さん、死んじまうかもしれねーぜ!」

「なっ………死……!?」

 加藤先輩の言葉に、わたしも椅子を蹴たてて、立ちあがった。

「加藤先輩……!
 紫音、ドコ……!」

「……待て、守屋!
 加藤もだ!!」

 先輩と二人。

 廊下に飛び出したそのとたん。

 宮下先生に腕を掴まれた。

「授業中だぞ、守屋は席につけ!
 加藤は、教室に戻れ!」

「イヤです!」

「ヒトの命に関わるものならば、救急隊か、警察に任せればいいんだ!」

「ハナシになんねーな!
 それじゃ駄目だから……!」

 吐き出すように、叫んだ加藤先輩のセリフを、宮下先生は、手で制した。

「本来なら守屋は。
 村崎に対してもう何もしなくてもいいのに、行くんだね?」

「はい!」

「自分の意志で。
 自由な心で、村崎の所に行くんだね?」

「そうです!」

 
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