危険な瞳に恋してる
 わたし……わたし、紫音が、やっぱり、好きだから。

 わたしじゃないとダメならば。

 しかも、死んじゃうかもしれないことならば。

 何が何でも、絶対、行くんだから。

 たとえ、止められたって!

 睨んだわたしに、あきらクンが微笑んだ。

「じゃ、行けよ」

「……え?」

「春陽ちゃんが、自分の意志で行くなら『あきらクン』はとめねぇぜ?
『宮下先生』なら、止めるけどな……」

「宮下先生……!」

「今、僕はあきらクン、だ。
 クソったれ。
 オトナになるとな……
 かぶりたくもねぇ仮面を被って演じたくもねぇ、自分を演(や)んなきゃいけねえときもある。
 特に、教師、なんざおカタい商売をしてる時は、な。
 僕の最優先事項は、萌と世界一幸せなイエを作ることなんだ。
 面倒な事に巻き込まれて、路頭に迷うワケには、いかないんだぜ?」

「あきらクン……」

「いくつもの『顔』を持つのは、何も、紫音ばかりじゃねぇって事だ。
 ……調子崩した守屋を、保険委員長の加藤が家まで送る。
 ……苦しいけど、これで押し通してやるから、ココロおきなく行って来い」
 
 
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