危険な瞳に恋してる
「ありがとう!
 あきらクン……って、加藤先輩は、保険委員長だったっけ!?」

「おう、知らなかったのか?
 加藤は、ヒトと関りあうのが好きだから。
 ヒト助けも面倒じゃないって言ってたな。
 将来のユメは、看護師だったっけ?
 介護師だったっけ?
 何にしても、いいユメもってんだからさ。
 お前もあんまし、遠回りするなよ?
 な、加藤?」

「うるせえ、よ!」

 怒鳴る先輩の顔は、なんだか赤い。

 そっか……

 そうなんだね。

 みんな、何かを守るために、顔を持つ。

 好きな誰かとか。

 それとも、ヒトにはちょっと恥ずかしくて言えない本心だったり。

 それは、皆が持っている、普通な、コト。

 少し、ほっとした気分で、わたしは、前を見る。

 紫音のコトだから……あと、一つぐらい、持っている……かな。

 ……わたしが望む、最後の、顔を。

「守屋、はやく!」

 加藤先輩に呼ばれて、わたしは、走った。

 紫音の元へ。

「よゆーがあったら、紫音に何も出来なくて悪かった、と伝えてくれ」という、あきらクンの声に送られて。

 わたしは、走る。





 
< 283 / 313 >

この作品をシェア

pagetop