危険な瞳に恋してる
紫音の家は。
高級(たか)そうだけど、シンプルな。
如何にも、紫音の好きそうなワンルーム・マンションだった。
一階の出入り口には、モニター付きの操作パネルがある。
その横には、自動ドアが設置され、外側からは、開かない。
マンションに用のあるヒトは、そのパネルで部屋番号を押して、インターホンで通話して自動ドアを開けてもらう仕組みらしい。
……のに。
加藤先輩が、部屋番号を押しても、紫音からの応答は、ないようだった。
閉ざされた自動ドアの前で、先輩と二人で顔を見合わせる。
「……留守……?」
「そんなはずは、ないんだ」
加藤先輩は、クビを振った。
「ほら、ここのランプがついているだろう?
これは、部屋から、ここを見ている証拠なんだよ。
守屋は、ちょっと、ここに立って、呼びかけろ」
言われるままに、先輩と場所を交換して、呼んでみる。
「……紫音……?
大丈夫………?」
「……守屋……か?」
……!
呼んで応えたその声に、ぞっとした。
インターホンごしとはいえ……
こんな……こんなかすれた声は、どうして、出るの……!?