危険な瞳に恋してる
Ⅷ章
それぞれの旅立ち
国際空港の出発ロビーには。
たくさんの人々が大荷物を抱えて、行き来していた。
家族連づれや、団体さんは、旅行だろう。
スーツを着たビジネスマンは、お仕事で。
みな、行き先も目的もばらばらのヒトたちだったけれど、たった一つ、共通している事があった。
……それは。
この、日本っていう小さな島国から、出て行くってコトだ。
「……やっぱり、薫ちゃん……行っちゃうの?」
薫ちゃんの横だと、二つの大きなスーツケースが小さく見える。
黒いジーパンをはいて。
だいぶラフな男の格好をしている薫ちゃんは、寂しそうに微笑んだ。
「うん……
もう、ダーク・クラウンに紫音ちゃんは、いないから……
あたしが、残っている意味、ないもの」
「薫ちゃん……」
「ん、もう。
寂しいからって、春陽ちゃんは、そんな顔、しちゃだめよ?
涙で美人がだいなしになったら、紫音ちゃん、きっと悲しむわよ?」
「薫ちゃぁん……」