危険な瞳に恋してる
「……何の話をしているんだ?」

 飲み物を買いに行っていた紫音は。

 わたしと薫ちゃんにそれぞれ、ペットボトルのジュースを投げると。

 自分のスーツケースの上にどかっと座った。

「……ん、とね。
 これからの、コト。
 ねぇ、紫音。
 わたしも、ガッコを卒業したら、紫音のトコに留学しに行ってもいいかな?」

 わたしの質問に、ミネラル・ウォーターのフタを開けながら、紫音は答えた。

「……ダメ」

「えええっ……!
 なんで!」

 てっきり『来い』って言ってもらえるものとばかり思ってたわたしは、ぷう、と頬をふくらませた。

 そんなわたしに、紫音は、軽く笑う。

「オレがこれから行くところはフランスだぞ……?
 英語が赤点寸前だったお前が。
 あと一年以内で、授業がわかるほど、フランス語が判るようになるとは、思えねぇ」

 あう。

 確かに……

 痛いトコロを突かれて、わたしは、甘いジュースをちょっぴり苦く飲んだ。

  
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