危険な瞳に恋してる
「春陽が。
 オレと同じ、菓子職人(パテシェ)の道に進みたいなら。
 まず、日本の専門学校で基礎知識を詰め込んでから、留学しても遅くねぇ。
 どうしても、留学したけりゃ、その間に、せいぜいフランス語を頑張るんだな」

 言って紫音は、片目をつむった。


 そう。

 あの時、紫音は。

 薬とお酒の中毒を同時に起こして……死にかけた。

 実際に、薫ちゃんが来るのがもう少し遅ければ、助からなかったかもしれない。

 それだけ、心臓や肝臓や………他の内臓に大きなダメージを受けて、紫音は、もう。

 お酒をうけつけられないカラダになってしまったんだ。

 加藤先輩みたいにバイトならば、ともかく。

 紫音の立場で、お酒が飲めないでは、通らないらしい。

 接客に支障のでるほどの……ホストの世界での死、を病院のベッドで聞いて、紫音は。

 ツキモノが落ちたようなさっぱりとした顔をしてたけど。

 入院中、ベッドで紫音があんまりぼんやりしているから。

 わたしがつい。

 また料理を作ってご馳走してね? ってねだっているうちに……

 ……いつの間にか、こんなに話が大きくなっちゃった。

 紫音は、本格的にケーキや、お菓子を作るパティシエになるために。

 日本を離れるコトになった。
 
 
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