危険な瞳に恋してる
 父さんと紫音は、和やかに学校の話なんかしている。

 呆然としているわたしをよそに。

 ………でも。

「……では、私はこれで」

 ずっと穏やかな微笑みをたやさなかった村崎先生は。

 帰り際、わたしにすれ違いながら、小さな声で、囁いた。


 からかうように。



「親にバレたくなかったら、言い訳ぐらい考えておけよ。
 莫迦なやつ。」


 ……ば、ばかっ……!?


 また、莫迦って言った!



 腹立つ!



 莫迦にされて、わたしは、思わず心の中でゲンコツを握りしめると。

 すれ違う紫色の瞳が笑っていた。

 彼は、そのまま歩いて行くと。

 後ろ向きのまま、キザっぼく手を振った。






 先生と紫音の中間で。






 やっぱり、わたしのコト、莫迦にしている!




 ……わたし、このヒト嫌い。




 世界で一番大嫌い!


 横暴な父さんと、どっちがより嫌いか、考えたくないぐらいに!



 わたしは、腹を立てていて気がつかなかった。






 とても大切なものを忘れていた事に。






 
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