危険な瞳に恋してる
「おはよう、柴田~っ!
 げほごほげほっ!」

 クラスで一番仲の良い、柴田萌(しばたもえ)だ。

 わたしが、黒板消しを持ったままの手を振ってあいさつすると、柴田は、不思議そうに、首をかしげた。

「春陽ってさ、教材係だったよね~?
 なのに、今日、日直なの?」

 教材係って言うのは。

 授業で使うプリントや、大きな教材を職員室や、倉庫から教室に運んだり、片付けたりする係りだ。

 毎日が結構忙しいので、この係りになると、日直と掃除当番がパスできた。

 本来ならば。

 ……だけど……

「今日、日直の真紀子に交代、頼まれたんだ。
 ……その……加藤先輩、呼び出してもらう代わりに……」

 柴田は、おおおっ!と目を輝かせた。

「そっかぁ、春陽~! ついに告ったのね!
 春陽、一年の時からずーっと好きだったもんねぇ。
 がんばったじゃない!」

 柴田は、うんうん、と一人で、盛り上がり……声をひそめて聞いてきた。

「……ん、で?
 結果は……?」

「………振られました」

「うそぅ!!」

 わたしの言葉に、柴田は目を丸くした。
 
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