危険な瞳に恋してる
 加藤先輩は、結構足が速い。

 サッカー部、だからかな?

 黙ってずんずん進む先輩の後を、わたしは一生懸命ついて行った。

 それにしても。

 なんで、加藤先輩はお昼に誘ってくれたんだろう?

 それは、ちょっとは不思議だったけれど、別にたいしたことじゃなかった。

 一晩経ったら、気が変わったのかもしれない。

 先輩の後を歩いてゆくのは、大変だったけれど、わたしは、とっても嬉しかった。

 ……もしかしたら……昨日、振ったの、無し、とか言ってもらえるかも知れない。

 彼女にしてくれるのかもしれないって、思ったから。





 ……でも。

 先輩が、社会科準備室の前から延びる、屋上へ続く階段に上がっていくのを見て。

 わたしは、さすがに首をかしげた。

 確か、ここから出る屋上は。

 校舎の空調設備のためのファンがあったり、貯水槽があったりして、他の階段から出る屋上とは切り離されていて。



 ……生徒は立ち入り禁止のはずだった。



「……先輩、そこからは、カギが掛かってて、屋上には出られないんじゃ?」
 
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