危険な瞳に恋してる
「どうだ?
 少しはできたか?」

 テストが終わって、答案を回収して来ると、村崎先生が笑う。

 肉食獣みたいな顔で。

「……テストは、あんたの為に作ったんだ」

 そうでしょうとも。

 最っ低!

 囁く声に、わたしは思わず睨んだ。

 ……と。

 あれ?

 今、一瞬。

 わたしに睨まれて、傷ついた顔……した?

 気のせいよね?

 わたしは、乱暴に、テストを教卓の上に置くと席に戻った。

 そして、席から、ちらっと先生を見ると。

 特に変わった様子も無い先生が、答案をまとめて封筒に入れている。

 やっぱり、見間違いかな?

 首を傾げていると、先生は、思いだしたように言った。

「そうそう。
 教材係りは、このテストを、職員室に持って行ってください。
 そして、今日使った教材は、日直が社会科準備室に返してくださいね?
 それでは、授業を終わります」

 え?

 言って、さっさと教室を出ていってしまった村崎先生を見送って。

 わたしは、やっと、先生が何をしたかったか、気がついた。

 ……先生は。

 今日は、わたしを社会科準備室に入らなくても良いように考えてくれたんだ………!
 
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