危険な瞳に恋してる
「……えっ……!」

 突然の話に、わたしは目を見張った。

「ウチって……ここ?
 ダーク・クラウンで……?」

「そうよ」

 薫ちゃんは、にこっと笑った。

「もちろん。
 ホールに出て、お客さまのお相手をさせるわけにはいかないけれど。
 ホストの控え室と、スタート前のホールの掃除の手伝い。
 それと、ちょっとした雑用をしてくれれば、時給千五百円で雇ってあげる」

 千五百円!

 街の相場の倍だ。

「……なんで……!
 わたし、今までバイトもしたことないし。
 何の役にも立たないけど……っ!」

 驚いているわたしに、薫ちゃんは、片目を瞑った。

「いいのよ。
 そもそも、最初に紫音ちゃんが、イケズなコトをしたんだから。
 紫音ちゃんが、オーナーのここから、ちょっとぐらい多くバイト代もらってもバチは当たらないわよ。
 それに………」

 薫ちゃんは、わたしの目を見て言った。

「春陽ちゃんは、紫音ちゃんのコト。
 本当は、泣くほど……好き、なんでしょう?」

 薫ちゃんに聞かれて、わたしはまた、涙があふれそうになった。

「……うん」
 
< 93 / 313 >

この作品をシェア

pagetop