君が綴る物語(仮)
序章
そのとき、にわかにピンクの目をしたウサギがアリスの前を走っていきました。
これはたいそう変わっているというほどの出来事ではありませんでしたし、ウサギが「ああたいへんだ、たいへんだ、おくれてしまうぞ!」とひとり言をいったのも、それほど並はずれたことには思いませんでした。
でも、そのウサギが実際に、チョッキのポケットから時計をとりだして、それに目をやってからいそいでかけだすのをみると、アリスはとび起きました。
チョッキを着たウサギだの、時計をとりだすウサギだの、一度も見たおぼえがないことに、はっと気がついたからでした。
物珍しさに夢中になったアリスはウサギを追って野原をよこぎり、ウサギが垣根の下の大きなウサギ穴にぴょんととびこむのをどうやら見とどけました。
そして、つぎの瞬間にはウサギにつづいてアリスもウサギ穴にとびこみました――。
< 1 / 11 >