ソレは若気の至りだったと言う事にしておこう。
真夏にクーラーの効いた部屋で汗ばむ程に身体を重ねた事を思い出してしまう。

されるがまま、欲望に踊らされた日々。

早く立ち去りたいのに、この人の前から足が動かない。否、動かないのではなく、意図的に動かさないのか……?

「真面目な事を言っていても、ほら……ミーナは物欲しそうな顔をしているよ」

頬に右手を触れられたが、嫌な気持ちは無い。寧ろ、もっと触られたい様な感情さえも沸き立って来る。

「……せっかく会えたんだから、何処か行かない?」

その何処かが何処なのかは、深く考えなくても察せる。このまま着いて行けば引き返す事など出来ない。……けれども、全てを捨てて着いて行ってしまいたい様な気さえもする。

付き合っている時から、元彼の強引さと強い瞳に抗えないのだ。何度も裏切られて来たのに、まだ心の奥底では欲しいと思ってしまうのか……。

元彼に肩を抱かれて、何も言えずにフラフラと着いて行ってしまいそうになった。

今彼の事は大好きだけれども、刺激が欲しくなってしまった。




もういいや、どうでもいいや。



仕事も今彼も。

初めて浮気と言うものをしそうになっている。

だけれども……別れた後も元彼とは、こうして何度も関係を交わして来たのだから。

それが急に私の前からも姿を消して、しばらく連絡も会う事も無かった。連絡先もいつの間にか変わっていた。噂では結婚を考えている本気の彼女が出来たと聞いた。

今は……、もう本気の彼女とは別れたのだろうな。じゃなきゃ、私を誘ったりしない。




夏が来れば毎年の様に思い出していた。

目の前に現れれば欲望には勝てないのだ。ずっとずっと望んでいた、貴方の事……。
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