いつかの君と握手
「全部がそうとは言い切れないけどな。あたしが考え付かないだけで、中には上手く回避する方法もあるのかもしれない。
でも、大人になったら問題は絶対解決する。まず、大人の言い分も理解できるようになる。
ついでに、大人と対等になる。
だからさ、きっと大人になるのが一番簡単で手っ取り早いんだよ」
「そんなの、長いよ。全然てっとりばやくないよ」
不満げに鼻を鳴らし、全身でため息をつく。
「そうかあ? イノリは案外早く大人になるかもしれないぞ。あたしより遥かに色んな経験してるしな」
「大人ってハタチになったら大人なんでしょ? だったらミャオのほうが早いにきまってるよ」
「違うよ、それ。ハタチは単に成人扱いされるだけだ。
本当の大人になるっていうのは、気持ちの問題だよ。ハタチ越してもコドモみたいな人はいるし、逆にハタチになってなくてもオトナっていう人もいる」
「ええ、本当? じゃあ、ぼくミャオより早く大人になれる?」
「可能性は、ないとも限らんな」
「そっかあ……。ねえ、ミャオはぼくが早く大人になったほうがいい?」
「ん? そうだなあ。子どものままもかわいいけどなあ。
でも、大人のイノリも見てみたいかな。あたしがクラクラするくらいのいい男になってるだろうしなあ」
大澤父ばりの大人のイノリを想像しようとしたのに、何故か大澤の顔が思い浮かんだ。
いや、何故かも何も、あいつはイノリの成長後なんだっけ。
あたしの中では未だにイノリと大澤がイコールで繋がってないので、違和感があるのだけど。
ふむ。大澤、かあ。
あいつは、まだ大人という感じじゃなかったなー。
けっこう感情的だったような気がする。
駄々っ子、というか。
しかし身体的成長という視点からすれば、ばっちり追い抜いてはいたか。
見上げるくらい背が高かったし。
って、こんなかわいい子が本当に(綺麗だけども)あんな仏頂面になるの?
意味わかんない。
納得できない。
時間の流れって残酷すぎじゃないの。恐ろしすぎる。
いやいやしかし、大澤父のDNAと加賀父の教育の末には、2名の父親を凌駕するほどの渋い大人の大澤が存在するのかもしれない。
あたしのハートを鷲摑むような、素敵紳士に成長したイノリ、はたまた大澤、か。
うーん、想像できない。
いや、もうこの際、あるかどうか分からない未来はいらない。
いっそのこと、イノリの成長がこのまま止まってしまえばいいのだ。
この小さくかわいいまんまで、永久にぐりぐりもふもふさせてくれればいい。
ああ、それが最善策。幸せルートだわ。
「ミャオはさあ、やっぱりぼくはおおさわの家に行ったほうがいいと思う?」
「へ?」
ほんの少し煩悩の海に浸かっている間に、少年の思考は次のステージに行っていたらしい。
ふいに質問された。
「ぼく、おおさわの家に行ったほうがいいのかな?」
「ふ、む」
それねえ、既に何回も考えた問題なのよ。
でね、答えでなかったの。
何が正解なのか、わかんないんだ、あたし。
真っ直ぐにあたしを見つめる瞳。
真剣に考えている瞳。
これに、きちんと答えたい。答えなくちゃいけない。
「あたしにも、わかんないや」
「へ?」
でも、大人になったら問題は絶対解決する。まず、大人の言い分も理解できるようになる。
ついでに、大人と対等になる。
だからさ、きっと大人になるのが一番簡単で手っ取り早いんだよ」
「そんなの、長いよ。全然てっとりばやくないよ」
不満げに鼻を鳴らし、全身でため息をつく。
「そうかあ? イノリは案外早く大人になるかもしれないぞ。あたしより遥かに色んな経験してるしな」
「大人ってハタチになったら大人なんでしょ? だったらミャオのほうが早いにきまってるよ」
「違うよ、それ。ハタチは単に成人扱いされるだけだ。
本当の大人になるっていうのは、気持ちの問題だよ。ハタチ越してもコドモみたいな人はいるし、逆にハタチになってなくてもオトナっていう人もいる」
「ええ、本当? じゃあ、ぼくミャオより早く大人になれる?」
「可能性は、ないとも限らんな」
「そっかあ……。ねえ、ミャオはぼくが早く大人になったほうがいい?」
「ん? そうだなあ。子どものままもかわいいけどなあ。
でも、大人のイノリも見てみたいかな。あたしがクラクラするくらいのいい男になってるだろうしなあ」
大澤父ばりの大人のイノリを想像しようとしたのに、何故か大澤の顔が思い浮かんだ。
いや、何故かも何も、あいつはイノリの成長後なんだっけ。
あたしの中では未だにイノリと大澤がイコールで繋がってないので、違和感があるのだけど。
ふむ。大澤、かあ。
あいつは、まだ大人という感じじゃなかったなー。
けっこう感情的だったような気がする。
駄々っ子、というか。
しかし身体的成長という視点からすれば、ばっちり追い抜いてはいたか。
見上げるくらい背が高かったし。
って、こんなかわいい子が本当に(綺麗だけども)あんな仏頂面になるの?
意味わかんない。
納得できない。
時間の流れって残酷すぎじゃないの。恐ろしすぎる。
いやいやしかし、大澤父のDNAと加賀父の教育の末には、2名の父親を凌駕するほどの渋い大人の大澤が存在するのかもしれない。
あたしのハートを鷲摑むような、素敵紳士に成長したイノリ、はたまた大澤、か。
うーん、想像できない。
いや、もうこの際、あるかどうか分からない未来はいらない。
いっそのこと、イノリの成長がこのまま止まってしまえばいいのだ。
この小さくかわいいまんまで、永久にぐりぐりもふもふさせてくれればいい。
ああ、それが最善策。幸せルートだわ。
「ミャオはさあ、やっぱりぼくはおおさわの家に行ったほうがいいと思う?」
「へ?」
ほんの少し煩悩の海に浸かっている間に、少年の思考は次のステージに行っていたらしい。
ふいに質問された。
「ぼく、おおさわの家に行ったほうがいいのかな?」
「ふ、む」
それねえ、既に何回も考えた問題なのよ。
でね、答えでなかったの。
何が正解なのか、わかんないんだ、あたし。
真っ直ぐにあたしを見つめる瞳。
真剣に考えている瞳。
これに、きちんと答えたい。答えなくちゃいけない。
「あたしにも、わかんないや」
「へ?」