いつかの君と握手
あたしの問いに、少年はこっくり頷いて見せた。


「うん」

「そ、そう……、なんだ」

「ぼく、大人になる。父さんたちの考えが分かるようになるよ。
そのときは、ミャオにも教えてあげる」

「あ、うん。お願いします」


ぺこんと頭を下げた。
しかし、そうか。この子、完全にあたしを抜くつもりでいるのか。

むむ、生意気な。
あたしは追われるほうが萌える……じゃない、燃える性格なのだ。
簡単に抜かれるものか。
って、どんな競争だ。


「仕方ない。かえろうか」


少年はえらそうに言ってのける。
しかしまあ、ぐずられるよりよっぽどいい。


「あいよ。じゃあ、背中にのりな」

「ええー。おんぶって、やだよ。はずかしい」

「じゃあ歩けるのか?」

「う……」


悔しそうに唇を噛む。


「だって、ぼく男だぞ。女の子のミャオにおんぶされるのなんて、いやだよ」

「男だとか女だとか、関係ないだろ。怪我してるんだからさ」

「でもぉ……」


おいおい、この問題でぐずるのかよ。
難儀な男心だねえ、全く。


「仕方ないだろ。今、イノリは歩けないんだからさ」

「そうだけどー、でも、ミャオにおんぶされるのは、いやなんだもん」

「いやなんだもん、って言ってもさ。ここにずっといるわけにはいかないだろ。ワガママ言うなって」

「あ! ミャオもぼくをワガママって言った! ミャオも父さんといっしょなんだ!」

「いや、この場合は本当におまえのワガママだろ」


ぶう、と頬を膨らませたイノリの頭を軽くぺしんと叩く。


「おまえは怪我してて歩けない。あたしはおぶって歩ける体力がある。ここにずっといるわけにはいかない。
な? イノリが大人しくおぶされば問題解決だ」

「でも、ぼく男だし……」

「あのなあ、イノリ」


こいつの頑固なとこ、一体誰に似てるんだろうな。
困ったもんだ。
ため息を一つついた。


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