いつかの君と握手
……う、む、よし。
さて、帰るか。

と言いたいが、はてさて、どっちに行けばいいんだ?
イノリの声を頼りに考えなしに走ってきたから、帰りの方向がわからない。
とりあえずこの崖の上に移動しなくちゃいけないよなあ

うーむ、とりあえず上に行けそうな道を探すか。


「ミャオ? どうしたの?」

「いや、別に。さ、行こう」


うーん、とりあえずあっちに行ってみるか。
向こうの方角から来たような気がするし。上に登れるような場所があればいいんだけど。


なんとなく方向を決めて、歩き出した。



***

……迷った。
完全に迷子になってしまった。


行けども行けども、木。木、木、木、木。
たまに蔦。

うーむ、全っ然帰り道が分からない。


イノリを背負ったまま、こっそりため息をついた。


迷子になっちゃった、てへ。
なんてこの子に言ったら不安がるだろうしなあ。

しかし。
どうすっかなー、もう。

ああ、ケータイが使えたら、こんなときにさっ! とかけて、
「ヘルプ! ヘルプ!」とやるんだけどなー。

は! そうだ!
地面にでっかくSOSと描いて、救助ヘリに見つけてもらえば……ってここ森の中だし!
つーかヘリ出てねーだろ。そんなにでかい問題になってたら大変だしな。

いやでも、このままだとそうなる可能性も否定できんな。
イノリを発見してから、かれこれ1時間……いや2時間は経過しているし。

ヤバい、早く戻らなくては。

でもどっち行けばいいのぉぉぉ。


「見てー、ミャオ。星がきれいだよ」

「んあ?」


背中からののんびりしたイノリの声に、空を見上げた。
うあ、ほんとだ。綺麗だなー。

一面の星だ。プラネタリウムみたい。
って、本物のほうがもっともっと綺麗だけど。

< 150 / 322 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop