いつかの君と握手
「うん、そうかもしんない。
もし理由があるんだとしたら、大澤くんが関係してるような気がする。
ほら、昨日の話だと、穂積くんって大澤くんを気にしてたみたいじゃない?
その大澤くんがさ、今朝ミャオちゃんをおんぶして登校してきたことに、何か思うことがあったんじゃないかなあ」
「はあ、おんぶぅ? それだけで?」
「それだけ、なんてことないよお! ミャオちゃんは別行動だったから知らないだろうけど、あの後もみんな大澤くんの話題ばっかりだったんだよ?
ミャオちゃんと大澤くんが付き合ってるんじゃないかってあたしに確認しに来た子も、何人もいたんだよー」
「はあ!? イノ……大澤とは何もないし!」
『何か』はあったが、付き合うとかそんな方向性のことではないのだ。
驚いたあたしに、琴音は頷いた。
「うんうん、そうだよねえ。
でも、大澤くんが女の子をおんぶするなんて信じらんないって、すごい騒ぎでね?
ミャオちゃんのこと好きだからあんなことしたんだって人と、優しいっていうそれだけだって人と、口論状態だったんだ。
まあ、あんなにモテてるのに女の子に見向きもしなかった人のしたことだから、当たり前の騒ぎかもしれないねえ。
あたしもアレを見たときはすんごくびっくりしたよ? 特に、ミャオちゃんが大人しく背中に乗ってたことに、だけどー」
にやりと笑って見せる琴音。
うう、やっぱりソコをついてきますか……。
「ええ、と。いや、もう足が痛くて痛くて仕方なくてですね、はい」
ビニールに包まれた足を大げさに擦ってみせる。
穂積にも指摘されたけど、やっぱりあたしが大人しく背負われることって、おかしかったみたいだ。
まあ、あんだけ毛嫌いしてたわけだしなあ……。
しかし困ったなあ。
琴音にはイノリとのこと、どう説明したらいいんだろう。
上手い理由が思いつかん。
とりあえずへらりへらりと笑ってみせたあたしに、琴音はふうん? と意味ありげな視線を寄越した。
「まあ、その辺りはまたゆっくり聞くことにするけどー。ミャオちゃんが話してくれるの、待つしね? あ、頭流してくれるかなあ?」
「あ、ハイ!」
しゃわしゃわとお湯をかける。
長い髪を手際よく洗いながら、それでね、と琴音が言った。
「それでね、これは仮定の話なんだけどー、穂積くんも大澤くんがミャオちゃんのこと好きなんだと思ったんじゃないかな。
で、常々コンプレックスを抱いていた穂積くんは、大澤くんからミャオちゃんを奪っちゃおう、みたいなことを考えた、とか」
「は?」
「穂積くんの話からすると、大澤くんには負けっぱなしだったとか言ってたし、そういうこと考えてもおかしくないかなー、と思うんだよねえ。
あ、シャワーもういいよ。ありがとお」
「あ、うん……」
話の内容を脳内で咀嚼しているあたしを放っておいて、琴音は濡れた髪をタオルで拭いた。ヘアクリップで器用にアップにする。
「まあ、ふっと思いついた仮説だから、全然違うかもしんないんだけど。
それに、あたしとしてはただ単にミャオちゃんが好きになったんだ、って信じたいもん。
ごめんね、告白に裏があるかも、みたいな言い方して……って! ひゃ、何!?」
困ったように眉を下げる琴音の肩をがっしと掴んだ。
「それだ! すごいなあ、琴音! きっとそれだよ!」
「ええ? 何?」
もし理由があるんだとしたら、大澤くんが関係してるような気がする。
ほら、昨日の話だと、穂積くんって大澤くんを気にしてたみたいじゃない?
その大澤くんがさ、今朝ミャオちゃんをおんぶして登校してきたことに、何か思うことがあったんじゃないかなあ」
「はあ、おんぶぅ? それだけで?」
「それだけ、なんてことないよお! ミャオちゃんは別行動だったから知らないだろうけど、あの後もみんな大澤くんの話題ばっかりだったんだよ?
ミャオちゃんと大澤くんが付き合ってるんじゃないかってあたしに確認しに来た子も、何人もいたんだよー」
「はあ!? イノ……大澤とは何もないし!」
『何か』はあったが、付き合うとかそんな方向性のことではないのだ。
驚いたあたしに、琴音は頷いた。
「うんうん、そうだよねえ。
でも、大澤くんが女の子をおんぶするなんて信じらんないって、すごい騒ぎでね?
ミャオちゃんのこと好きだからあんなことしたんだって人と、優しいっていうそれだけだって人と、口論状態だったんだ。
まあ、あんなにモテてるのに女の子に見向きもしなかった人のしたことだから、当たり前の騒ぎかもしれないねえ。
あたしもアレを見たときはすんごくびっくりしたよ? 特に、ミャオちゃんが大人しく背中に乗ってたことに、だけどー」
にやりと笑って見せる琴音。
うう、やっぱりソコをついてきますか……。
「ええ、と。いや、もう足が痛くて痛くて仕方なくてですね、はい」
ビニールに包まれた足を大げさに擦ってみせる。
穂積にも指摘されたけど、やっぱりあたしが大人しく背負われることって、おかしかったみたいだ。
まあ、あんだけ毛嫌いしてたわけだしなあ……。
しかし困ったなあ。
琴音にはイノリとのこと、どう説明したらいいんだろう。
上手い理由が思いつかん。
とりあえずへらりへらりと笑ってみせたあたしに、琴音はふうん? と意味ありげな視線を寄越した。
「まあ、その辺りはまたゆっくり聞くことにするけどー。ミャオちゃんが話してくれるの、待つしね? あ、頭流してくれるかなあ?」
「あ、ハイ!」
しゃわしゃわとお湯をかける。
長い髪を手際よく洗いながら、それでね、と琴音が言った。
「それでね、これは仮定の話なんだけどー、穂積くんも大澤くんがミャオちゃんのこと好きなんだと思ったんじゃないかな。
で、常々コンプレックスを抱いていた穂積くんは、大澤くんからミャオちゃんを奪っちゃおう、みたいなことを考えた、とか」
「は?」
「穂積くんの話からすると、大澤くんには負けっぱなしだったとか言ってたし、そういうこと考えてもおかしくないかなー、と思うんだよねえ。
あ、シャワーもういいよ。ありがとお」
「あ、うん……」
話の内容を脳内で咀嚼しているあたしを放っておいて、琴音は濡れた髪をタオルで拭いた。ヘアクリップで器用にアップにする。
「まあ、ふっと思いついた仮説だから、全然違うかもしんないんだけど。
それに、あたしとしてはただ単にミャオちゃんが好きになったんだ、って信じたいもん。
ごめんね、告白に裏があるかも、みたいな言い方して……って! ひゃ、何!?」
困ったように眉を下げる琴音の肩をがっしと掴んだ。
「それだ! すごいなあ、琴音! きっとそれだよ!」
「ええ? 何?」