いつかの君と握手
「へえ、そうなんだ。いいなあ、穂積。こんなかわいい子とずっと同じクラスだったんだ」

「あはは、美弥緒、男みたいなこと言ってるな」

「ええ、ありがとお。女の子にそんなこと言われたの初めてだけど、嬉しいなあ」


和気藹々と話していると、ふと殺気めいたものを感じた。
おおおおう、やべえ。またもや忘れかけていた。


「わ、悪い。ちょっと忘れてた」

「ふうん……」


いつ離れたのか、近くの壁にもたれるようにしてこちらを見ていたイノリにおずおずと謝ると、冷ややかな声が返ってきた。
見下ろすような瞳が怖い。
うう、怒ってる。
今日、何度この顔見たっけ。


「で、もういいのか。自己紹介的なものは」

「あ、ハイ。充分です、すみません」

「ん? 祈くんと美弥緒ちゃん、どうかしたの?」


事情を知らない葵ちゃんが首を傾げる。


「ちょっとこいつと話があるんだ。もういいなら、連れてくぞ」

「え?」


葵ちゃんの眉間に微かにシワが寄った。


「はなし?」

「そう。ほら、行くぞ。手を出せ、ミャオ」


言うなり、イノリはあたしの手を取った。
ひょいと引き上げられるようにして立ち上がる。


「え、ええと、どこ行くのさ?」

「とりあえず、どっか」

「どっかってそんな」


しかし穂積たちに聞かせられる話でもないしな。
とりあえずついて行くしかないか。


「じゃ、じゃあ悪いけど行くね」

「ん。じゃあね、美弥緒」

「ば、ばいばい……」


笑みを消した穂積と、不思議そうな様子の葵ちゃんに見送られるようにしてその場を離れた。


「……あ、あのさ。一人で歩ける、んだけど」

「んあ? ああ」


イノリに手を引かれたまま、外に出た。
グラウンドに行く気なんだろうか。


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