いつかの君と握手
「おはよう、大澤」

「…………」


爽やかな挨拶をかました穂積に応えず、イノリはずかずかとあたしに近寄ってきた。
無言のまま傍まで来たイノリは、あたしの頭に乗った穂積の手をぱしんと払った。
乾いた音に、教室内のざわめきが一気に静まった。


「痛いな。なに、大澤」

「こいつに手を出すなって言ったよな、俺」

「手を出すな、って言われても。オレはただ朝の挨拶をしてただけだけど?」

「へえ? オマエって挨拶するのにいちいち体に触んのかよ」

「そうだね。美弥緒にだけ、だけどね」

「……へえ?」


至近距離にいる二人の間の空気が凍結した。
ひしひしと不穏なものを感じる。

いや、二人だけじゃない。教室全体の空気が固まってる。
誰もが息を殺して様子を見ている。
幾つもの視線が二人に、いや、あたしにも注がれているのを感じながら、頭を抱えた。


あああああああああ、もう。
まただよ。今日もこれだよ。
どうしてこうなった。
どうしてこうなったんだ。


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