いつかの君と握手
あたしだって、彼女たちと同じ立場ならば、はやし立てたかもしれない。
いや、修羅場だーなんて言って、きゃっきゃとはしゃいでいたに違いない。
断言しよう。
だから文句なんて言えない。
のだが、でもでも。
これだけは言いたい。言わせてください。
それ、河童だし! 尻子玉って、河童の話だし!
猫全く関係ないし!
つーか男の尻なぞから玉を抜いたとかそういう方向は止めて下さい本当にお願いします。この通りです(脳内土下座)。
『……でもぉ、確かにあの二人が茅ヶ崎さんをー、ってちょっと信じらんない』
どこからか、誰かが言葉をぽつんと落とした。
それはさざ波のように広がっていった。
『そう、だよねー……。あんなに奪い合う意味がわかんないっていうか』
『だね。すごく綺麗、とかじゃないし……』
『ぶっちゃけ地味だろ。正直どこがいいんだよって感じだよな』
『同感。そこまで固執するなんて、趣味疑うわ』
うあ。そ、それは自分でも心からそう思うんですが、でもやっぱり人に言われるとちょっと凹むというか、何というか。
つーか、なんだかもうすんません。すんません。
ひー、この場から全力疾走で消え失せたい!!
居た堪れねえ、と琴音の肩口に顔を隠そうとした、その時。
『うるせえっ!!』
『黙っててくれるかな』
ざわめきを一蹴する、怒声が響いた。
『他人がとやかく言うことじゃねーんだよ!』
『自分が理解できないからって否定してもらいたくないね』
途端、静まり返った。
誰もが口を噤み、視線を伏せた。
しばし、沈黙。
『う、わぁ……。ミャオちゃん、すごく想われてるんだ……』
果たして、周囲の人たちと同じように言葉を失っていたあたしのすぐ近くで、琴音がぽつんと呟いた。
『な!? こ、琴音ってば何て……!』
何てことを、と言おうとしたその時、こちらを見る強い視線に気付いてしまった。
かち合ってしまった目線の先にいた二人が、口を開く。
『俺は! オマエが好きだ』
『本気だから』
『う……、あ……』
沸騰した血液が、全身を真っ赤に染めていく気がした。
過剰運転し始めた心臓のせいなのか、胸元からこみ上げてきた何かのせいなのか、酷く息苦しい。
こちらを見ている二人の顔が、潤んで見えた。
な、なななななななななななな、何を公衆の面前で言っているのだ。
恥とかそういう言葉を知らんのか、この馬鹿者どもは。
つーか、あれか。あたしを殺す気か。
心臓発作で殺っちまう気なのか。
いや、修羅場だーなんて言って、きゃっきゃとはしゃいでいたに違いない。
断言しよう。
だから文句なんて言えない。
のだが、でもでも。
これだけは言いたい。言わせてください。
それ、河童だし! 尻子玉って、河童の話だし!
猫全く関係ないし!
つーか男の尻なぞから玉を抜いたとかそういう方向は止めて下さい本当にお願いします。この通りです(脳内土下座)。
『……でもぉ、確かにあの二人が茅ヶ崎さんをー、ってちょっと信じらんない』
どこからか、誰かが言葉をぽつんと落とした。
それはさざ波のように広がっていった。
『そう、だよねー……。あんなに奪い合う意味がわかんないっていうか』
『だね。すごく綺麗、とかじゃないし……』
『ぶっちゃけ地味だろ。正直どこがいいんだよって感じだよな』
『同感。そこまで固執するなんて、趣味疑うわ』
うあ。そ、それは自分でも心からそう思うんですが、でもやっぱり人に言われるとちょっと凹むというか、何というか。
つーか、なんだかもうすんません。すんません。
ひー、この場から全力疾走で消え失せたい!!
居た堪れねえ、と琴音の肩口に顔を隠そうとした、その時。
『うるせえっ!!』
『黙っててくれるかな』
ざわめきを一蹴する、怒声が響いた。
『他人がとやかく言うことじゃねーんだよ!』
『自分が理解できないからって否定してもらいたくないね』
途端、静まり返った。
誰もが口を噤み、視線を伏せた。
しばし、沈黙。
『う、わぁ……。ミャオちゃん、すごく想われてるんだ……』
果たして、周囲の人たちと同じように言葉を失っていたあたしのすぐ近くで、琴音がぽつんと呟いた。
『な!? こ、琴音ってば何て……!』
何てことを、と言おうとしたその時、こちらを見る強い視線に気付いてしまった。
かち合ってしまった目線の先にいた二人が、口を開く。
『俺は! オマエが好きだ』
『本気だから』
『う……、あ……』
沸騰した血液が、全身を真っ赤に染めていく気がした。
過剰運転し始めた心臓のせいなのか、胸元からこみ上げてきた何かのせいなのか、酷く息苦しい。
こちらを見ている二人の顔が、潤んで見えた。
な、なななななななななななな、何を公衆の面前で言っているのだ。
恥とかそういう言葉を知らんのか、この馬鹿者どもは。
つーか、あれか。あたしを殺す気か。
心臓発作で殺っちまう気なのか。