いつかの君と握手
ちりちりと焦げていく感覚。
最近、たまにこうなる。

なんだ、これ。不整脈?
馴れない痛みの扱いに困る。


「うー……」


ガラリ。
ぎゅむ。


「……っいってぇぇぇ!?」

「あ。悪い、ミャオ」


背中の戸が急に開いた音がしたかと思えば、肩甲骨辺りを踏まれた。
踏みつけやがったのは、イノリだ。


「なにすんだよ! 痛えし!」

「いや、そんなとこに座りこんでるほうも悪いだろ。何してたんだよ」


不思議そうに首を傾げられた。
どうやらさっきあたしが立ち聞きしていたことは、気付かれていないらしい。


「え、えーと。床が冷たいなー、ってまあそんな感じだよ」

「冷たいか? 窓際のほうが風が入って涼しいんじゃねえの」

「いいんだよ、ここで! ほら、日差しは肌に悪いしな!」

「ふうん。とにかく立てよ」


ほら、と差し出された手を掴んで立ち上がる。


「待たせて悪かった」

「べ、別にいいよ。暇だし、あたし」


ちらりとイノリの様子を窺う。
特に変わった様子はない。

さっきの子、結構かわいい子なのに。
そんな子から想いを寄せられて、動揺とかしないのだろうか。


もしかして、告白慣れ、とかそういうやつ?
だったら、すげえ。
あたしはあんなの、一生慣れそうにない。

つーか、あんな断り方して……。


『あいつは誰よりも綺麗だけど』


イノリの顔を見ていると急に言葉が甦ってきて、再び顔が赤くなってしまった。


「ミャオ? どうかした?」

「な、なんでもないっす!」


イノリに怪しまれないように首をぶんぶん振った。
消えろ! あんな台詞!


「で、俺に何か用事だったんじゃないのか?」


へ? と一瞬考えて、用件を思い出す。
ああ、そうだ。すっかり頭から抜け落ちてしまってた。


「いや、まあ大したことでもないんだけどさー」


ちょっと待ってよ、とポケットからケータイを取り出した。
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