いつかの君と握手
「これを肌身離さず持っててね、ミャオちゃん!」

「あ、ありがとう」

「あ、室内とかでは使用禁止だって。巻き添えどころの話じゃないからね!」

「りょ、りょうかい」


多分、ヒグマに襲われない限り使うことはないと思います。
がしかし、琴音とケンくんの好意。
ありがたく受け取らずしてどうする!

頂いたスプレーは、カバンの奥底に沈めました。


「それにしても、穂積くんが迎えに行ってたんだね。びっくりしたなあ」


凶器をカバンにしまいながら、琴音が言った。


「オレができることやろうと思ってさ。できるだけ傍にいようかな、と」

「そっか。でも、安心して。校内では、あたしがミャオちゃんから離れないようにするから。がっちり、守るよ!」


むん、と胸を逸らす琴音に、穂積がにこにこと笑った。


「ああ、琴ちゃんがいるなら安心だね。男のオレだと、どうしても一緒にいられないこともあるし」

「うん、任せて!」


「あー、いや。大丈夫だから、ホントに」


別に命を狙われてる訳じゃないんだし。

それに、いざとなればどうとでもできる。
自分ひとり守ることくらい、できないあたしではないのだ。
護身術程度の心得はありますとも。

しかし、琴音たちを安心させるには、些か弱い発言であったらしい。


「大丈夫じゃないからそんな怪我したんでしょお!?」

「そうだよ。集団心理って怖いからね。いつ過激になるとも限らない」


本当に、大丈夫なんだけどなあ。
しかし、それを証明する手立てなどない。

二人にギロリと睨まれたあたしは、大人しく口を閉じたのだった。


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