いつかの君と握手
言いためらったあたしに、イノリはますます声を荒げた。
「田中と付き合ってるってことでいいんだな? 間違いじゃないんだな!?」
「や、それは違うっ!」
「どう違うんだよ!?」
「――オレが美弥緒と付き合ってるとして、大澤がキレるのは間違いじゃないの?」
いつの間に近くに来ていたのか、穂積が口を挟んだ。
その発言に唖然とする。
どうして今そんな火に油的なことを言うんだ!?
「はあ? なに言ってんだ、田中」
「大澤と美弥緒が付き合ってるというのなら話は変わるけど、違うよね?
そういうことで美弥緒を責めるのは、筋違いだと思うよ。
君はただ単に、昔美弥緒に会ったことがあるだけだろ?
それだけの関係で、何を責める権利があるのさ」
「は!? 何も知らねえくせに言ってんなよ?」
「昔のことは知らないけど、君に美弥緒を独占できる権利は何一つないことくらい、知ってるさ」
穂積はあたしの机に広がった写真を一枚手に取った。
それを見て、ふうん、と呟く。
「言っておくけど、これは君が思ってるような内容じゃない。
このことで美弥緒を責めるのは、大きな間違いだよ」
「はあ!?」
「穂積!」
慌てて穂積を止めた。
もしかして、ここで言うつもりなのでは、と思ったのだ。
「止めて」
「ああ、ごめん。そうだったね」
ひょいと肩を竦めた穂積に、イノリが舌打ちした。
ぎろ、とあたしを睨む。
「なんだ。やっぱり田中と何かあるんじゃねーか」
「あ、いやそういうことじゃなくて」
弁解しようにも、どう言えばいいのか分からない。
おろおろしたあたしに、イノリがふ、と息を吐いた。
「分かった。もういい。そういうことなんだな。
それならそうと、言えよ。馬鹿みてえじゃん、俺」
今まで聞いたことのない、冷え冷えした声だった。
「や、違っ」
「違わねえだろ。田中は、さっきから否定してねえ」
「イノリ、違う!」
「ほーい、今学期最後のHRだぞー、とな。席つけえい」
間延びした森じいの声が、会話を止めた。
ぷいとあたしから視線を逸らして、イノリは離れていった。
「田中と付き合ってるってことでいいんだな? 間違いじゃないんだな!?」
「や、それは違うっ!」
「どう違うんだよ!?」
「――オレが美弥緒と付き合ってるとして、大澤がキレるのは間違いじゃないの?」
いつの間に近くに来ていたのか、穂積が口を挟んだ。
その発言に唖然とする。
どうして今そんな火に油的なことを言うんだ!?
「はあ? なに言ってんだ、田中」
「大澤と美弥緒が付き合ってるというのなら話は変わるけど、違うよね?
そういうことで美弥緒を責めるのは、筋違いだと思うよ。
君はただ単に、昔美弥緒に会ったことがあるだけだろ?
それだけの関係で、何を責める権利があるのさ」
「は!? 何も知らねえくせに言ってんなよ?」
「昔のことは知らないけど、君に美弥緒を独占できる権利は何一つないことくらい、知ってるさ」
穂積はあたしの机に広がった写真を一枚手に取った。
それを見て、ふうん、と呟く。
「言っておくけど、これは君が思ってるような内容じゃない。
このことで美弥緒を責めるのは、大きな間違いだよ」
「はあ!?」
「穂積!」
慌てて穂積を止めた。
もしかして、ここで言うつもりなのでは、と思ったのだ。
「止めて」
「ああ、ごめん。そうだったね」
ひょいと肩を竦めた穂積に、イノリが舌打ちした。
ぎろ、とあたしを睨む。
「なんだ。やっぱり田中と何かあるんじゃねーか」
「あ、いやそういうことじゃなくて」
弁解しようにも、どう言えばいいのか分からない。
おろおろしたあたしに、イノリがふ、と息を吐いた。
「分かった。もういい。そういうことなんだな。
それならそうと、言えよ。馬鹿みてえじゃん、俺」
今まで聞いたことのない、冷え冷えした声だった。
「や、違っ」
「違わねえだろ。田中は、さっきから否定してねえ」
「イノリ、違う!」
「ほーい、今学期最後のHRだぞー、とな。席つけえい」
間延びした森じいの声が、会話を止めた。
ぷいとあたしから視線を逸らして、イノリは離れていった。