いつかの君と握手
シートに身を預けたあたしは、ぼんやりと車窓を流れる景色を眺めていた。
雲までも真っ赤に染めてゆく夕日が眩しい。
ああ、夏の夕暮れって意味もなく郷愁に駆られるのはどうしてなのかしら。
行ったこともない田舎の夏祭りや、やったこともない川遊びが懐かしいってどういうこと。
「しかし、何時ごろ、着くのかなー……」
カタンカタンと揺れるは六両仕立ての特急列車。
膝の上には荷物を詰めたメッセンジャーバッグ(親睦旅行の時に使ったアレだ)。
そう、あたしはあれから大急ぎで支度をして、電車に飛び乗ったのだった。
柳音寺、行ってやろうじゃねえか。
行って、直接謝って、誤解を解く!!
宵越しの金も諍いも持たねえ。
美弥緒さんの行動力なめんなよ。
とまあ、最初こそ盛り上がっていたのだが、時間が経つにつれ、やっちまった感に襲われだした。
到着時刻はどれだけ見積もっても、夜だ。
連絡もせず、いきなり夜中に現れるなど、迷惑至極。無礼千万の行為ではないか。
しかも、その時間てことは今夜はもう泊まらせてもらうしかないわけで。
あああああああああっ!!
明日の朝イチに出発すりゃよかった。
だったら昼ごろつけるし、日帰りも可能だったのに! あたしの馬鹿! 考えなし!
「あー……どうしよ……」
いっそ、帰るか。
いやでも、ここまで来ちゃったし、明日再戦するには資金の関係で厳しい。
残念ながら孝三の給料日前、つまりはお小遣い日前なのだ。
あー、やっぱバイトするしかないな。新聞配達でもするかな体力には自信あるのだ。
でも、今から始めても意味がない。
うんうんと悩んでいる間に、電車は目指す駅へと到着した。
ここからローカル線に乗り換えなのだ。
おいでおいでというように口を開けた電車の前で仁王立ちをしてしばし考えたが、結局乗り込んだ。
もう、ここまで来たら行くしかないじゃないか。
そうこうして、ようやくついた駅は、無人だった。
薄闇に包まれた駅前は青々とした田んぼが広がっており、遠くに民家の灯りがぽつん。
どこからか、グアグアとカエルの鳴き声がするが、それ以外には音はない。
気持ちいいくらいの無音である。
息継ぎの荒い外灯の下で、あたしはしばし立ち尽くしていた。
コンビニ一つない田舎……。
ここからどうすれば……。
柳音寺まで、歩くしかないのか……。
「え、えーと。えーと。あ!」
きょろきょろと見渡せば、少し離れたところに、斜めに傾いたバス停の時刻表らしきものが見えた。
駆け寄って、確認。
うあー、一時間に一本てどういうことー。
いや、それでもバスがあるならいいではないか!
ケータイの時間と照らし合わせたら、20分後に一本来るらしかった。助かった!
路線図とケータイの地図を見比べて、それに乗れば柳音寺の近くまで行けることを確認して安堵のため息。
これなら8時にはつけそう、多分。
「あ。今のうちに琴音に連絡しとこう」
家には、琴音の家に泊まると言って出て来たのだ。
琴音に連絡して、口裏を合わせてもらわなくては。
数コールで、琴音ののんびりした声が聞こえた。
『もしもしい?』
「あ、琴音? あたし。あのさ、今日琴音の家に泊まるってことにしておいてくれない?」
『ん? いいけど……ミャオちゃんどこかに行くの?』
雲までも真っ赤に染めてゆく夕日が眩しい。
ああ、夏の夕暮れって意味もなく郷愁に駆られるのはどうしてなのかしら。
行ったこともない田舎の夏祭りや、やったこともない川遊びが懐かしいってどういうこと。
「しかし、何時ごろ、着くのかなー……」
カタンカタンと揺れるは六両仕立ての特急列車。
膝の上には荷物を詰めたメッセンジャーバッグ(親睦旅行の時に使ったアレだ)。
そう、あたしはあれから大急ぎで支度をして、電車に飛び乗ったのだった。
柳音寺、行ってやろうじゃねえか。
行って、直接謝って、誤解を解く!!
宵越しの金も諍いも持たねえ。
美弥緒さんの行動力なめんなよ。
とまあ、最初こそ盛り上がっていたのだが、時間が経つにつれ、やっちまった感に襲われだした。
到着時刻はどれだけ見積もっても、夜だ。
連絡もせず、いきなり夜中に現れるなど、迷惑至極。無礼千万の行為ではないか。
しかも、その時間てことは今夜はもう泊まらせてもらうしかないわけで。
あああああああああっ!!
明日の朝イチに出発すりゃよかった。
だったら昼ごろつけるし、日帰りも可能だったのに! あたしの馬鹿! 考えなし!
「あー……どうしよ……」
いっそ、帰るか。
いやでも、ここまで来ちゃったし、明日再戦するには資金の関係で厳しい。
残念ながら孝三の給料日前、つまりはお小遣い日前なのだ。
あー、やっぱバイトするしかないな。新聞配達でもするかな体力には自信あるのだ。
でも、今から始めても意味がない。
うんうんと悩んでいる間に、電車は目指す駅へと到着した。
ここからローカル線に乗り換えなのだ。
おいでおいでというように口を開けた電車の前で仁王立ちをしてしばし考えたが、結局乗り込んだ。
もう、ここまで来たら行くしかないじゃないか。
そうこうして、ようやくついた駅は、無人だった。
薄闇に包まれた駅前は青々とした田んぼが広がっており、遠くに民家の灯りがぽつん。
どこからか、グアグアとカエルの鳴き声がするが、それ以外には音はない。
気持ちいいくらいの無音である。
息継ぎの荒い外灯の下で、あたしはしばし立ち尽くしていた。
コンビニ一つない田舎……。
ここからどうすれば……。
柳音寺まで、歩くしかないのか……。
「え、えーと。えーと。あ!」
きょろきょろと見渡せば、少し離れたところに、斜めに傾いたバス停の時刻表らしきものが見えた。
駆け寄って、確認。
うあー、一時間に一本てどういうことー。
いや、それでもバスがあるならいいではないか!
ケータイの時間と照らし合わせたら、20分後に一本来るらしかった。助かった!
路線図とケータイの地図を見比べて、それに乗れば柳音寺の近くまで行けることを確認して安堵のため息。
これなら8時にはつけそう、多分。
「あ。今のうちに琴音に連絡しとこう」
家には、琴音の家に泊まると言って出て来たのだ。
琴音に連絡して、口裏を合わせてもらわなくては。
数コールで、琴音ののんびりした声が聞こえた。
『もしもしい?』
「あ、琴音? あたし。あのさ、今日琴音の家に泊まるってことにしておいてくれない?」
『ん? いいけど……ミャオちゃんどこかに行くの?』