いつかの君と握手
「えーと、ほら、泣かないでいいからさ」


自分の記憶は辿れても、子どもと触れ合ったことがないので、どうしていいか分からなくなる。
躊躇いながら、小刻みに揺れる頭をそっと撫でた。


「言っとくけど、あたし大人じゃないからね。あんたと一緒の子どもなんだからさ、過剰に期待しないでよ?」

「うん! うん!」

「あんたに迷惑かけるかもしんない。つーか、絶対かけるよ。何しろ無一文だしね」

「うん、うん!」


この子は、あたしが自分と似たように不安そうにしていたから、あたしを助けてくれたのかもしれない。
柔らかい髪を撫でながら思った。
同族を探してた、そんな感じだったんじゃないんだろうか。

大澤(幼)、かわいいじゃないか。
自分の中にあるとは思わなかった庇護欲が湧いてきそうじゃないか。


「ほら、これからの作戦会議するぞー。イノリ」

「う、うん」


弟がいたら、こんな感じ?
一人っ子だったから、すごく新鮮だ。


「ほら、泣きやみな。あたしにちゃんと父ちゃんについて説明しなさい」

「う、うん……っ」


ごしごしと目元を拭って、イノリが顔を上げた。


「ミャオ! よろしくおねがいしますっ」


あたしを信頼しきった笑顔をみて、おおおおう、責任重大じゃないか、とビビる。

ごめん、あんたが思ってるほど、あたしはすごくないの。
何しろ無戸籍無一文だからね。
親が見たら不審者認定確実だからさ。

でも、頑張って父ちゃんに会わせてやる。
その心意気でいます。
なのでそこらへんを重要視しておいてもらいたい。

てな訳で。


「えーと、とにかく、よろしく」


ぺこんと頭を下げた。

こうして、あたしの過去の旅が始まったのだった。

なんてナレーション入れてみました。てへ。



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